気候変動に対する基本的な考え方
当社グループはSDGsに代表される社会課題やステークホルダーからの要求に対し、サステナビリティ上のマテリアリティとして「脱炭素経営(気候変動対策)の推進」「資源循環対策の更なる推進」「環境貢献製品の創出と拡大」「CSR調達の推進」「DX推進による競争優位性の確保」「イノベーション創出に向けた研究開発」を特定しました。これらの課題を解決することによって社会に対してソリューションを提供し、企業の持続的な成長を目指します。
中でも気候変動の企業への影響は投資家をはじめとしたステークホルダーの高い関心ごとにもなっており、当社グループとしてもTCFD提言に基づき気候変動による影響を分析し対応することといたしました。その結果、気候変動リスクによる長期的な財務インパクトは当然あるものの、同時に機会も多くあることが明確になりました。
当社グループは、本分析を踏まえて気候変動リスクの低減と事業機会の拡大を推進し、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。

ガバナンス
当社グループは、気候変動をはじめとした地球規模の環境問題への配慮、人権の尊重、従業員を含む全てのステークホルダーへの公正・適正な事業活動など、社会や企業のサステナビリティを巡る課題解決を事業機会と捉え、これに向けた取り組みを推進するため「サステナビリティ委員会」を設置しています。当委員会は、サステナビリティ推進担当取締役常務執行役員を委員長とし、取締役及び執行役員を委員として構成されます。
また、2021年4月、組織を横断するESG活動に関する基本計画の策定や、その推進を担当するセクションとして、「サステナビリティ推進部」を新設しています。サステナビリティ推進部にて企画立案された環境保全に関する計画は、環境保全推進委員会にて審議されます。更に、当社グループのコンプライアンスを統括するコンプライアンス委員会を設置し、実働部隊であるコンプライアンス実行委員会と連携しながら、遵法精神の周知啓発活動や内部通報への対応等を行っております。
これらの体制の下、最重要テーマである気候変動対策についても、取り組み状況をステークホルダーに向けて積極的な情報開示を行うと共に、継続的に改善を行いながら環境マネジメントシステム等の仕組みを通じて管理し、その結果についてマネジメントレビューを行っています。

戦略
気候変動のリスクと機会を明確にするために2つのシナリオを設定しました。「気候変動対策が進まず成行きのまま気温が上昇し、それによる物理的リスク・機会が発生するシナリオ」を4℃シナリオとして「急性」「慢性」について分析を行いました。一方「温暖化防止に向けて様々な活動が実施され、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会が発生するシナリオ」を2℃シナリオとして「政策・規制」「技術」「市場」「評判」について分析を行いました。
シナリオ分析を行う上では、当社の主要事業部である合成樹脂事業部、新規材料事業部、建材事業部ごとにバリューチェーンを設定し具体的な検討を行い、主要なリスク及び機会による財務インパクトの算定、対応策の検討を行いました。
シナリオ分析の結果概要
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炭素税の導入による当社グループの直接的なコストアップ及び炭素税がサプライヤーに課されることによる原材料コストアップが主な収益減の要因になると考えられます。
コストアップ例:2020年度のCO2排出量(Scope1,2)約9万tに、仮に炭素税等として10,900円/t*を乗じた場合、年間10億円程度 *出所:環境省「インターナルカーボンプライシング活用ガイドライン(2020年3月)」 -
一方でCO2削減を目標とした、リサイクル原料やバイオマス原料を用いたフィルム、食品ロス低減に寄与するバリアフィルム、自動車のEV化に資する周辺部材、建築廃材を用いたパーティクルボードを基盤に、木材のカスケード利用や建築物の木造化による炭素固定などのニーズの高まりがビジネスの機会として明確になりました。
こうした重要な個々のリスクと機会への対応策を明確にしながら経営戦略と一体化して気候変動対策を推進していきます。
自社を取り巻くリスク・機会のイメージ図(2℃シナリオ)

自社を取り巻くリスク・機会のイメージ図(4℃シナリオ)

主要なリスク及び機会の対応策
大分類 | 中分類 | 小分類 | リスク・機会 | 想定される自社への事業インパクト | 考えられる対応策 |
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移行リスク | 政策 規制 |
GHG排出に関する規制強化 | リスク | 炭素税導入により製造コストが増加する |
生産性の向上 省エネ設備の導入 再生可能エネルギーの導入 製品価格の見直し |
技術 | 次世代技術の進展・普及 | 機会 | リモートワーク、遠隔技術が進み、IT関連製品の売上げが増加する | IT関連製品の製造工程の自動化による生産性向上 | |
市場 | エネルギー需要の変化 | リスク | エネルギー(電気・燃料)費用が上昇し、製造コストが増加する |
省エネ設備の導入 省エネ施策の実施 |
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木材チップのエネルギー利用が進み、パーティクルボードの原材料が不足する | 木材チップ仕入れ先の拡大 | ||||
機会 | 自動車のEV化が加速し、周辺部材の売上げが増加する | 周辺部材の生産能力の拡大 | |||
低炭素製品の需要変化 | リスク | 原料需要の変化により製造コストが増加する |
既存製品の設計見直し リサイクル原料の採用拡大 |
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リデュース(薄膜化・簡略化)により包装用フィルムの売上げが減少する |
既存製品の設計見直し 薄膜化技術の深化 |
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機会 | 環境貢献製品の売上げが増加する |
環境貢献製品の開発促進 ISCC認証によるマスバランス制度の導入 |
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木造非住宅建築物市場が拡大し、関連製品の売上げが増加する | 木造非住宅建築物への対応・販売 | ||||
評判 | ステークホルダーの評判変化 | リスク | ESG投資に遅れを取ると、企業価値が低下する | SBTへの取組み検討 | |
機会 |
地方自治体と協働で植林などの環境対応策を行うことにより、 企業価値が向上する |
カーボンオフセットに向けた山林の購入及び植林 地方自治体の植林などの環境対策への協賛 |
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物理的リスク | 慢性 | 地球温暖化による環境変化 | リスク | 気温上昇により労働環境が悪化し労働者が確保できなくなるため、操業困難となる | 製造工程の自動化による省人化 |
気温上昇や長雨の影響で、パーティクルボードの製造コストが増加する | 木材チップの保管場所や製造設備の見直し | ||||
機会 | 外出機会が減少し巣ごもり需要等で、ディスプレイ関連製品の売上げが増加する | 製造工程の自動化による生産性向上 | |||
急性 | 自然災害の激甚化 | リスク | 自然災害により原料が調達できず、生産活動に支障を来す | 代替原料の認証取得 | |
自然災害により自社の工場が操業停止になり、売上げが減少する |
複数の製造拠点で認証取得 自家発電設備、蓄電池の導入 |
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機会 | 強度の高い木質製品の需要が高まり、関連製品の売上げが増加する | 対応製品の開発・販売 |
リスク管理
当社グループが気候変動リスク及び機会を選別・評価するプロセスは、事業部ごとに以下のステップで実施しています。これらのリスク及び機会の管理は「ガバナンス」の項目に示した体制で実施していきます。


指標と目標
GHG排出削減
従来より当社グループはCO2削減活動を続けておりますが、この度スコープ1及び2の2030年のCO2削減目標を設定しました。
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スコープ1及び2排出量削減目標
2030年:2013年比50%削減
実績としては2015年から着実にCO2削減が進んでおり、今後も計画に基づき着実に目標達成に向けて推進していきます。 -
スコープ3排出量
現在スコープ3排出量の算定を行っております。今後グループ全体のスコープ3排出量の開示と削減目標策定、実施計画の立案を推進していきます。
※(株)日本能率協会コンサルティングによる第三者確認
Scope2の電力は実排出係数を用いて算出した数値(各年度4月から3月データ)
環境貢献製品の拡大
当社グループは、自社及びサプライチェーン全体のCO2削減や資源有効利用等の環境負荷低減に寄与する自社製品特定と拡販目標を設定しております。
この活動においても「環境面の社会貢献と事業貢献の両立」を目指していきます。
目標 2030年までに生活サポート群における環境貢献製品の売上高比率を100%とする


環境貢献製品
「Caerula(カエルラ)」
Caerulaはラテン語で「青」という意味です。青は地球の色であり、大倉工業グループのイメージカラーの1つでもあります。また、カエルラという響きには、環境貢献製品として地球に還る(循環)という意味も込められています。

【ロゴマークの意図】
矢印=循環、緑色=自然
水色=海、白色=空をイメージ。