メッセージ

田中 祥友

取締役常務執行役員
コーポレートセンター担当兼
サステナビリティ委員長

田中 祥友

なぜサステナビリティに取り組むのか

 大倉工業が経営ビジョン「Next10(2030)」で掲げた、「お客様の価値向上と社会課題の解決に貢献し、事業を通じて、社会・環境価値を創出する」ことは、すなわち、社会との共生を念頭に持続可能な社会の実現に貢献する企業として成長する、ということを意味します。循環型経済を前提にしたビジネスモデルの構築が求められる中で、そうした環境変化を当社にとってのビジネスチャンスとして捉え、新規事業創出やイノベーションを創造し続けることによってサステナビリティを実現していきます。

6つのマテリアリティを策定

 サステナビリティを実現するために「脱炭素経営の推進」「資源循環対策の更なる推進」「環境貢献製品の創出と拡大」「CSR調達の推進」「DX推進による競争優位性の確保」「イノベーション創出に向けた研究開発」の6つのマテリアリティを定めました。また、サステナビリティをふまえ事業を継続していくために不可欠な基盤として「企業の信頼性・透明性の向上」「汚染防止の徹底」「地域社会との共生」「働きがいのある職場環境の整備」の4項目を併せて設定しました。

各工場で太陽光発電設備の設置を推進

 環境については、環境負荷低減の取組みとして、2030年に2021年比でCO2排出量を37%(2013年比50%に相当)に減らす目標を掲げ、各事業所における太陽光発電設備の設置、工場における省エネ型設備への更新を順次進めています。また、環境貢献製品に対して社内認証を行いこの比率を高めていく取組みを進めるとともに、従業員に脱炭素の重要性を浸透させるべくICP(インターナルカーボンプライシング)の導入も検討しています。

成長戦略に向けた人材の育成を強化

 社会については「Next10(2030)」の実現に向けた成長戦略を可能とする人材の育成を主眼に置き、「育成プログラム」「人事評価制度」「ダイバーシティ」「従業員のエンゲージメント」の4つに取り組んでいます。特にイノベーティブかつチャレンジブルなリーダーシップを養うべく、社外での人材交流や研修などを活用し、次代の経営を担う人材を育てていくとともに、人事評価制度の再構築と合わせて評価者教育も進めていきます。また、女性や海外人材の採用、役職登用を進めることで多様性を推進し、組織に新しい感性、考え方を取り入れていきます。

取締役会の監督機能を高める

 ガバナンスについては、取締役会の構成を見直し、社内取締役6名、社外取締役5名の構成とし、女性の社外取締役にもご就任いただいております。監査等委員会、指名報酬委員会を設置し、今後は監督機能としての取締役会、執行機能としての経営会議の役割分担を更に明確にしていきたいと考えています。

近藤 美穂

執行役員
コーポレートセンター
サステナビリティ推進部長
兼 法務・知財部長
兼 環境管理部長

近藤 美穂

社会との共生を念頭に企業価値向上を目指す

 サステナビリティ経営を推進していくためには全てのステークホルダーの皆さまと新しい価値を創り上げていくことが必要だと考え、このほどマルチステークホルダー方針を策定しました。この方針のもと、全てのステークホルダーの皆さまと共存共栄を目指していくとともに、事業を通じて得られた収益を適切に分配していきたいと考えています。

CO2排出量の削減目標は1年前倒しで達成

 6つのマテリアリティのうち「脱炭素経営(気候変動対策)の推進」については、2024年のCO2排出量を2021年比12%削減(2013年比30%削減に相当)する目標を掲げていますが、2023年は1年前倒しで達成しました。今後もCO2排出量削減効果が高い設備の導入やサプライチェーン全体での取組みを進め、カーボンニュートラルの実現に努めます。「資源循環対策の更なる推進」については、フィルム製品のマテリアルリサイクルに加えてケミカルリサイクルの事業化に向けたスキームをお客様と検討しているところです。「環境貢献製品の創出と拡大」については、生活サポート群製品における環境貢献製品の売上高比率を2024年までに50%以上にする目標を達成できる見込みです。

環境関連以外のマテリアリティの進捗

 「CSR調達の推進」については、人権や環境等に配慮した原材料調達の仕組み構築と運用に取り組んでいます。「DX推進による競争優位性の確保」については、デジタル技術の導入による生産性向上と業務改革を進めています。また、「イノベーション創出に向けた研究開発」については、10年後に私たちは社会にどのような価値を提供したいのか、その価値を提供するためにどのような資源が必要なのかを踏まえ、2024年中にR&Dセンターの知財戦略を立案します。

従業員は重要なステークホルダー

 大倉工業グループにとって、従業員の方々は最も身近で重要なステークホルダーです。物価上昇なども勘案して、2023年に引き続き2024年もベースアップを行いました。
 また2022年に教育体系を見直し、新たな教育プログラムをスタートさせています。更に2024年に、従業員が上司との面談を通じて会社に期待される役割等について理解を深める、新しい人事評価制度を導入しました。「従業員一人ひとりの成長が会社の成長に繋がる」という信念のもと、働きやすい職場、働きがいが感じられる職場を目指して取り組んでいます。このような取組みが、従業員が自らのキャリアデザインを考えるきっかけになることを期待します。

サステナビリティの取組み

大倉工業グループは、持続的発展可能な社会づくりへの貢献を目指すことが、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上へ繋がるものと考えています。
これまでCSR基本方針『「社会から信頼される企業」であり続ける』を掲げ、変化する社会環境の中で、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)を重視した事業運営を行ってきました。今後は、2020年に特定した事業を通じたソリューション提供への重要課題「マテリアリティ」と「事業継続のための基盤」を基に、サステナビリティを経営戦略の中心とした積極的な活動を推進していきます。

理念体系

経営理念

  • 人ひとりを大切に

    一人ひとりの人権を尊重し、安全で働きやすく、活力あふれる職場づくりに努めます。

    サステナビリティ基本方針

    「社会から信頼される企業」であり続けるために、事業を通じて、社会との共生を念頭に企業の成長を目指す

    サステナビリティ基本原則

    • 1. 事業とESGの両立 当社の経営理念の下、変化する社会環境の中でESGを重視した事業運営を行うことで、社会の持続的な発展と中長期的な企業価値の向上を目指します。

    • 2. 地球環境の保全 当社グループは、事業活動を通じて気候変動など地球環境問題への配慮、脱炭素社会の実現に向けた製品やサービスを提供し、地球環境の保全に貢献します。

    • 3. 法令順守・人権尊重と労働環境の配慮 当社グループは、全ての事業活動において法令や社会規範を順守するとともに人権を尊重し、ジェンダーや国際性、職歴、年齢を含む多様な働く人ひとりを大切にし、人材の育成、労働環境の改善、地域・社会への貢献を推進します。

    • 4. 情報開示と対話 当社グループは、自らの事業活動におけるサステナビリティへの取り組み状況に関して積極的に情報を開示し、ステークホルダーと対話しながら、社会の評価を受け経営に反映していきます。

  • 地域社会への貢献

    当社の製品・サービスを通じて、安心で快適な生活に貢献するとともに、良き企業市民として積極的に社会貢献活動に取り組みます。

    社 訓

    「事業」活動を支える行動指針

    • 日々向上

      一人ひとりが向上心を持ち、自身の課題を設定し、能力の向上に努める。

    • 創意工夫

      既成概念にとらわれず、新しい視点と発想で、改善・改革・開発に取り組む。

    • 同心協力

      一人ひとりが目標を共有し、互いに知恵を出し合い、対話を重んじ信頼関係を深め全体最適の視点で課題解決に努める。

  • お客様を第一に

    環境変化に応じて、必要とされる製品・サービスを常に提供し続け、お客様とともに成長していくソリューション企業を目指します。

    大倉工業倫理綱領

    「社会から信頼される企業」であり続ける

    行動の7原則

    • 1. 「人々の安心で快適な生活を支える」製品やサービスを提供し、消費者やユーザーの信頼を獲得します。

    • 2. 従業員のゆとりと豊かさを実現し、安全で働きやすい環境を確保するとともに、従業員の人格と個性を尊重します。

    • 3. 公正、透明かつ自由な競争を行うと同時に、政治や行政との健全かつ正常な関係を保ちます。

    • 4. 企業情報を積極的かつ公正に開示すると同時に、広く社会とのコミュニケーションを行い、各ステークホルダーと良好な関係を構築します。

    • 5. 市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力および団体とは、断固として対決します。

    • 6. 環境問題への取り組みは企業の存在と活動に必須の要件であることを認識し、自主的かつ積極的に行動します。

    • 7. 海外においては、その文化や習慣を尊重し、現地の発展に貢献する経営を行います。

重要課題(マテリアリティ)

大倉工業グループは、企業活動による事業及び社会課題への影響度合いを評価し、優先順位をつけることで真に取り組むべきマテリアリティを特定しました。

「マテリアリティの特定」推進STEP

  • STEP0

    自社の活動・製品・サービスとSDGsの関連性把握

    • 現状の自社の取組みが創出する社会的価値の把握
    • 自社の活動・製品・サービスが貢献するSDGs目標の明確化
  • STEP1

    同業他社の取組み理解と自社の今後の取組み検討

    • 環境・社会・企業における解決すべき課題の検討
    • 同業他社の取組みと自社の取組みの比較から、今後の取組み(アクティビティ)を抽出
  • STEP2

    バリューチェーン外部環境分析と自社の今後の取組み検討

    • 環境・社会・技術面から今後の社会変化(未来像)を想定
    • 想定した未来像において自社の創出する価値は何か、今後の取組み(アクティビティ)を抽出
  • STEP3

    マテリアリティ候補・活動テーマ候補の策定

    • STEP1、STEP2で抽出したアクティビティを取りまとめ、活動テーマ候補とマテリアリティ候補を抽出
  • STEP4

    活動テーマの重要度評価とマテリアリティの特定

    • 活動テーマごとの事業的価値と社会的価値の検討
    • 活動テーマごとに重要度評価をし、自社のマテリアリティ(重要課題)を特定

大倉工業グループのマテリアリティ

  • 脱炭素経営(気候変動対策)の推進

    KPI自社・物流のCO₂排出量
    • 自社(工場及びオフィス)からのCO₂
      排出量削減
    • 物流(出荷)の効率化とCO₂排出量削減
    • 7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
    • 11 住み続けられるまちづくりを
    • 13 気候変動に具体的な対策を
  • 資源循環対策の更なる推進

    KPI市場からの回収廃プラリサイクルを
    使用した製品売上げ
    • 工場廃棄物の大幅削減
    • 海洋プラスチックの削減
      使用後の廃資材等の回収、再資源化の促進
    • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
    • 12 つくる責任つかう責任
    • 14 海の豊かさを守ろう
    • 15 陸の豊かさも守ろう
  • 環境貢献製品の創出と拡大

    KPI生活サポート群環境貢献製品売上比率
    • 環境貢献製品創出の仕組み化と
      中長期目標設定
    • 機能性に優れた製品の開発及び販売
    • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
    • 12 つくる責任つかう責任
    • 13 気候変動に具体的な対策を
    • 14 海の豊かさを守ろう
    • 15 陸の豊かさも守ろう
  • CSR調達の推進

    KPIサステナブル調達制度の構築と
    調査実績管理
    • 人権等に配慮した原材料調達の仕組み
      構築と運用
    • 環境に配慮した原材料調達(グリーン調達)の
      仕組み構築と運用
    • 8 働きがいも経済成長も
    • 12 つくる責任つかう責任
    • 14 海の豊かさを守ろう
    • 15 陸の豊かさも守ろう
  • DX推進による競争優位性の確保

    KPIIT・AI技術による品質検査強化
    • 新しいデジタル技術の導入による
      生産性向上と業務改革
    • 営業活動及びマーケティングの高度化
    • より高品質で安全性の高い製品の追求
    • 8 働きがいも経済成長も
    • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • イノベーション創出に向けた研究開発

    KPI開発テーマ・特許出願件数
    • 新規事業の創出につながる
      マーケティングの強化
    • オープンイノベーションの積極的な活用
    • 8 働きがいも経済成長も
    • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
    • 17 パートナーシップで目標を達成しよう

事業継続のための基盤

更に、大倉工業グループとして事業を継続していくために不可欠な基盤となる「汚染防止の徹底」「働きがいのある職場環境の整備」「地域社会との共生」「企業の信頼性・透明性の向上」の4項目を併せて設定し、マテリアリティ同様に積極的な取組みを推進していきます。

  • 企業の信頼性・透明性の向上

    KPIコンプライアンス違反・行政処分件数
    • ESG情報の積極的な開示
    • ステークホルダーとの対話促進
    • 内部統制・コンプライアンス体制の整備
    • リスクの洗い出しとBCP(事業
      継続計画)のブラッシュアップ
    • 16 平和と公正をすべての人に
    • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
  • 汚染防止の徹底

    KPI国内法令違反件数
    • 有害化学物質の適切な管理
    • 水資源の使用量削減と適切な管理
    • 3 すべての人に健康と福祉を
    • 6 安全な水とトイレを世界中に
    • 12 つくる責任つかう責任
    • 14 海の豊かさを守ろう
  • 地域社会との共生

    KPI社会貢献活動参加者数及び
    貢献活動件数
    • 社会奉仕活動、地域環境保護活動の推進
    • 地域課題解決ビジネス、
      地域活性化ビジネスへの参画
    • 地域資源の積極的な利用
    • 11 住み続けられるまちづくりを
    • 14 海の豊かさを守ろう
    • 15 陸の豊かさも守ろう
    • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
  • 働きがいのある職場環境の整備

    KPI女性役職者・女性管理職比率
    • ダイバーシティ経営の実現
    • 働き方改革による生産性向上と
      ワークライフバランスの実現
    • やりがいのある人事評価制度構築と
      人財育成制度の充実
    • 労働安全衛生の強化
    • 3 すべての人に健康と福祉を
    • 4 質の高い教育をみんなに
    • 5 ジェンダー平等を実現しよう
    • 8 働きがいも経済成長も
    • 10 人や国の不平等をなくそう
    • 16 平和と公正をすべての人に
  • 環境
  • 社会
  • ガバナンス

サステナビリティ推進体制

大倉工業グループは、気候変動をはじめとした地球規模の環境問題への配慮、人権の尊重、従業員を含む全てのステークホルダーへの公正・適正な事業活動など、社会や企業のサステナビリティを巡る課題解決を事業機会と捉え、2021年4月にCSR委員会を改め「サステナビリティ委員会」を設置するとともに、ESG活動に関する基本計画の策定などを担当するセクションとして、「サステナビリティ推進部」を新設し、取組みを推進しています。当委員会は、サステナビリティ推進担当取締役常務執行役員を委員長とし、取締役及び執行役員を委員として構成しています。このうち、取締役には社外取締役も含めることで、当社グループのESG活動が世の中の動向にマッチしているかどうかも客観的な視点でチェックし、活動を進めています。2023年は、2回の委員会を開催し、当社グループとして特定した「マテリアリティ」や「事業継続のための基盤」に関する中長期的な課題認識の共有化及びそれら課題解決に向けた施策に対する協議、決定を行いました。
更に、当社グループのコンプライアンスを統括するコンプライアンス委員会を設置し、実働部隊であるコンプライアンス実行委員会と連携しながら、周知啓発活動や内部通報への対応等を行っています。 これらの体制のもと、取組み状況をステークホルダーに向けて、積極的に情報開示を行うとともに、継続的に改善を行いながら様々な活動を進めています。

サステナビリティ委員会 年間開催回数

2021年 2022年 2023年
2回 4回(臨時2回) 2回

サステナビリティ推進体制図

社外からの評価

CDPの評価について

大倉工業は、環境情報開示システムを提供する国際的な非営利団体であるCDPから2022年に初めて回答要請を受けて、気候変動質問書に回答しました。2023年は「気候変動」と「水セキュリティ」の2つの質問書に回答し、下記スコアに評価されました。

2023年 CDPスコア

カテゴリー スコア
気候変動 B
水セキュリティ B

イニシアティブへの参画

TCFD提言への対応

大倉工業は、2022年2月、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言へ賛同を表明すると共に、同提言に賛同する企業・金融機関等により構成される「TCFDコンソーシアム」へ参画しました。気候変動への対応を喫緊の課題と捉え、脱炭素社会実現に向けた取組みを促進させると共に、積極的な開示を行っていきます。

TCFD提言に基づく情報開示

「GXリーグ基本構想」へ賛同、「GXリーグ」に参画

GXリーグは、GX(グリーントランスフォーメーション)に取り組み、持続的な成長を目指す企業が、同様の取組みを行う企業群や官・学とともに協働する場として設置されました。
大倉工業は、2023年1月に「GXリーグ基本構想」へ賛同し、同年5月に「GXリーグ」に参画しました。

「気候変動イニシアティブ(JCI)」に参加、
「JCIメッセージ」へ賛同

気候変動イニシアティブ(JCI)は、宣言「脱炭素化をめざす世界の最前線に日本から参加する」に賛同し、気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、NGOなどの情報発信や意見交換の強化を目指したネットワークです。
大倉工業は、2023年4月に「気候変動イニシアティブ(JCI)」に参加及び「JCIメッセージ」へ賛同しました。