トップメッセージ
成長に向けた土台作りを行い、
次期中期経営計画へと
繋げていきます。
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2023年の業績は増収増益となり、
純利益は過去最高となりました売上高は788億6千万円(前年同期比2.1%増)、営業利益は49億5千万円(同31.4%増)の増収増益となりました。低採算製品については見直しを進めるとともに、光学関連製品のほか電池関連、接着剤などの機能材料など、高付加価値製品が伸びたことにより収益力を高めることができました。これにより、中期経営計画最終年となる2024年に向け、道筋を作ることができました。
事業部門別では、合成樹脂事業は、売上高510億円(同1.2%減)、営業利益は41億4千万円(同19.2%増)で減収増益となりました。「ライフ&パッケージBU」は、消費者の節約志向により、食品や日用品などの軟包材製品の販売数量が減少しました。「プロセスマテリアルBU」は、EV向け電池用タブテープが堅調だった一方で、電子材料用プロテクトフィルムや半導体搬送用パッケージフィルムは半導体市況の悪化で、販売数量が大きく減少しました。「ベーシックマテリアルBU」は、販売数量は減少したものの、コスト上昇分の製品価格への転嫁継続や環境貢献製品の伸長でカバーしました。「アグリマテリアルBU」は、2022年の製品値上げ前の駆け込み需要の反動で受注が減少し苦戦しました。利益は、原材料価格や電力料金、物流費などのコストが上昇したものの、製品価格への転嫁を継続するとともに、高付加価値製品の伸長により増益となりました。
新規材料事業は、売上高136億9千万円(同26.1%増)、営業利益18億5千万円(同38.1%増)で増収増益となりました。「機能材料BU」は、TPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)フィルムにおいて車載用途のヘッドレスト向けフィルムの増加や、封止材用の基材フィルムへの新規採用もあり好調に推移しました。「電子材料BU」は、スマートフォンを中心に中小型パネル向けの需要が冷え込み苦戦しました。「光学材料BU」は、大型液晶ディスプレイ用光学フィルムの需要が好調で大きく伸長しました。利益は、歩留まりの改善や生産性向上にも努めたことにより増益となりました。
建材事業は、売上高126億1千万円(同5.5%減)、営業利益は9億円(同4.5%増)で減収増益となりました。「パーティクルボード」は、既存顧客に加え、新規顧客獲得でシェアが向上しました。環境貢献型枠「木守®」は、建築需要の低迷とコンクリートパネルの価格下落の影響で苦戦しました。「プレカット」は、新設住宅着工戸数の減少と木材価格の下落の影響で低迷しました。利益は、パーティクルボードの安定生産の継続や付加価値の高い加工ボードの拡販に注力した結果、増益となりました。
また、純利益は保有する投資有価証券の売却益もあり、過去最高の43億1千万円(同13.9%増)となりました。 -
2024年は、選択と集中で
高付加価値製品の拡大に努めます2024年は、Next10(2030)の2ndステージである今中期経営計画の最終年に当たり「選択と集中」で既存製品の中でも付加価値が高い製品を伸ばし、収益力を高めることで更なる成長への土台を作り、次期中期経営計画へと繋げていきます。合成樹脂事業はプロセス機能材料の拡販・開発と環境貢献製品「Caerula®」の拡大を、新規材料事業は新設した広幅光学フィルム製造工場の安定稼働を、建材事業は加工ボード、環境貢献型枠「木守®」、省施工パネルの拡販と非住宅分野へのプレカット材の拡大を図っていきます。
また、海外市場については、広幅光学フィルムやEV向け製品を中心に伸ばしていきます。2025年1月の稼働を予定しているOKURA VIETNAMについては、第1期で20億円弱を投資し、まずEVをはじめとする自動車向け接着剤の生産からスタートし、従来の中国、南米向けに加え、欧州、東南アジア市場の開拓に努めます。今後、自動車やOA機器関連向けのフィルム加工事業の拡大も目指していきます。 -
次なる成長に向けた研究開発投資
についても注力しています今後の成長に繋がる研究開発案件として、R&Dセンターは、情報電子(高周波基板用フィルム、高機能ディスプレイ材料)、環境・エネルギー(ケミカルリサイクル、エネルギー関連部材)、ライフサイエンス(シングルユースバッグ、ヘルスケア・スキンケア原料)の開発に注力していきます。
具体的には、まずケミカルリサイクルの事業化に向けた検討を進めており、回収したフィルムをナフサに戻して石油化学メーカーに供給するスキームを考えています。事業化の目途がつけば大掛かりな設備投資になると想定しています。高周波基板用フィルムは、5Gとサブ6の普及に伴い、自動運転システムや遠隔医療の操作などにおいて需要の増加が見込め、事業化を見据えた投資のタイミングを図っています。また、大倉工業の持つ要素技術を生かせる分野として、次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池の材料の開発を進めています。2023年3月には、この開発を更に推進すべく、京都大学発スタートアップ企業で同電池の開発を行う株式会社エネコートテクノロジーズに出資しました。数年後には製品化に繋げていきたいと考えています。 -
2023年は投資計画の100億円を超える
投資をしました2023年の設備投資は100億円の計画に対し、111億円を投資しました。主なものとしては、新規材料事業の広幅光学フィルム新製造ラインへの投資が挙げられます。特に2,500㎜幅を中心に需要が増加していることから、2023年、仲南工場に製造ライン(G2ライン)を新設して生産能力を2倍に増強し、2024年から量産を開始しました。また、合成樹脂事業では、食品のロングライフ化やリサイクルしやすいモノマテリアル化に寄与する7種7層の多層フィルムの製造設備や、農業用多層フィルムの製造設備などに投資を行いました。建材事業では、三豊市高瀬町へのプレカット工場の移転などの投資を実施しました。今後想定される南海トラフ巨大地震が発生した際に、プレカット事業の木材加工や住宅部材の供給機能が求められると想定し、被災リスクの小さい同町の原下工業団地へ移転しました。2024年2月から稼働を再開しています。
2024年は、車載電池の高容量化と需要増加に対応するためのEV向け電池部材(タブテープ)生産に向けた設備改良や合成樹脂事業のDX化などをはじめ、総額61億円の設備投資を計画しています。OKURA VIETNAMへは6億5千万円の設備投資を予定しています。 -
四国地域材関連事業に合わせて
70億円の投資を行います近年の国産材回帰、木材利用分野の拡大を踏まえ、脱炭素・カーボンニュートラルに直接貢献できる事業として、森林資源循環利用による木質構造材、集成材事業への進出を決めました。香川県産材や四国地域材を活用した木質構造材料を製造するために、原下工業団地に新工場を建設し、プレカット工場の移設と合わせて整備を進めています。
事業を開始するにあたっては、香川県及び香川県森林組合連合会と、徳島県ではナイス株式会社及び同社子会社のウッドファースト株式会社と協定をそれぞれ締結しました。これにより、香川県森林組合連合会からはヒノキのラミナ(集成材を構成する板)を、またナイス株式会社からはスギ、ヒノキのラミナをそれぞれ供給いただく予定です。原木の伐採から集成材の製造・販売まで一気通貫のサプライチェーンを構築し、森林資源の循環利用、炭素固定の推進を図ります。今後木質化が進んでいくことが想定される非住宅高層ビル向けの材料として供給を増やしていく計画です。 -
大胆な投資と新技術の探求により、
持続可能な社会の実現に貢献しますこのほど、従業員、株主の皆さま、取引先様、販売店様をはじめとする全てのステークホルダーの皆さまとの信頼関係を持続的に構築していくためにマルチステークホルダー方針を掲げました。
マテリアリティの一つとして「脱炭素経営(気候変動対策)の推進」を特定し、CO2排出量を2024年に2021年比12%削減(2013年比30%削減に相当)、2030年に2021年比37%削減(2013年比50%削減に相当)を目標として掲げています。2023年のCO2排出量は、10万5,282t-CO2で2024年の目標値を達成しています。また、バイオマス樹脂やリサイクル材を含有した製品をはじめとする環境貢献製品を増やしていくことで、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減にも取り組んでいます。
2022年から導入を進めていたオンサイトPPAモデルによる太陽光発電システムは2023年に3拠点において、更に2024年2月から2拠点において発電を開始しました。2025年にはオンサイトPPAモデルの導入を1拠点で、大倉工業グループにおいては初となるオフサイトPPAモデルの導入も1拠点で予定しています。全てのシステムが稼働すると年間5,300tのCO2排出量削減になります。
また、油やガスを燃やして間接的に冷水を作り出す吸収式から電気エネルギーを使用する空冷式の設備への変更や工場の廃熱を利用する設備の導入など、CO2排出量削減に繋がる投資も引き続き積極的に行っているところです。このような取組みを通じて、次は2030年のCO2排出量の削除目標達成を目指してまいります。
2050年カーボンニュートラルを実現するためには、火力発電所におけるCO2削減や、水素・アンモニアなどのインフラ設備、CO2を分離・回収、貯留、利用する技術(CCUS)などのイノベーションが必要ですが、当社グループとしても大胆な投資と新技術の探求を行い、持続可能な社会の実現に貢献したいと考えています。
環境負荷低減に貢献するだけでなく、多くの人に優しい商品づくりも進めています。その一例が、目が見えない人のためにユニバーサルデザインとなる点字を模したごみ袋です。2023年にはある自治体で採用していただきました。このような製品も積極的に開発していきたいと考えています。 -
女性管理職への希望者を増やすため、
女性活躍に向けた研修も計画していますNext10(2030)の達成には、人材の育成が最大の課題であると考えています。2022年には新たな教育体系を構築し、順次、教育を開始しています。2023年には管理職に「中長期的な視点で職場(組織)の方向付けを行い、組織の課題を設定し、その課題を解決する能力」を身につけるための研修や、「評価者として、適切な目標設定・評価を行うための基本的な知識」を習得するための研修を開始しました。また、自組織のDX化を推進できる人材を育成するために、「DXの活用事例やマインドスタンスの理解」のための教育、「業務改善や生産性向上に繋がるスキル」の習得を目的とした教育も継続して実施しています。更に2024年には、女性管理職への希望者を増やすため、女性活躍に向けた研修なども計画しております。大倉工業グループは、2024年に約3億円の人的資本投資を計画しています。
当社グループは、2022年に女性分科会を設立し、女性活躍推進に向けた環境整備、女性従業員の意識向上などに取り組んでいます。このように、当社グループが「女性が働きやすい職場づくり」に注力する理由は、組織の多様性を確保するためですが、それだけではありません。女性が働きやすい環境を整えるために、会社側が有給休暇の取得率向上を目指すことや従業員のキャリアプラン形成のサポートを行うこと、ハラスメントのない職場づくりに取り組むことは、性別、年齢、国籍などに関係なく、全ての従業員にとって働きやすい環境づくりに繋がると考えています。
また、人事評価は、実績だけを見るのではなくそのプロセスについても評価し、管理職については経営的視点を持っているかどうかについても評価を行います。全従業員が目標設定シートを作成し、それに基づいて半年ごとに進捗を見たうえで、全従業員にフィードバック、フォローアップを行っていきます。
これらの取組みを通じて従業員のエンゲージメントを高め、「要素技術を通じて、新たな価値を創造し、お客様から選ばれるソリューションパートナー」というNext10(2030)で掲げた2030年に向けた「ありたい姿」をともに実現できる人材を育てていきます。 -
目指す事業ポートフォリオの実現に向け
成長投資を行っていきます現在、次期中期経営計画の策定に向けたプロジェクトをスタートさせており、事業戦略を練っているところです。目指す事業ポートフォリオの実現に向け、注力する領域に経営資源を投入し、成長投資を行っていくことで収益の拡大を図っていきます。特に成長が期待できる分野でのM&Aも視野に入れていきます。
一方で、政策保有株式をはじめとする投資有価証券の縮減、株主還元の拡充を進め、資本効率の向上に取り組み、PBR1倍以上を意識した施策に取り組んでまいります。加えて、安定的な配当を基本に、配当水準の更なる引き上げに努めるとともに、自己株式の取得が妥当と判断した場合には適宜検討してまいります。また、今後も株主・投資家の皆さまとの積極的な対話を進め、大倉工業グループの成長戦略についての理解を深めていただく機会を増やしていきます。これら施策の進捗状況については、毎年取締役会において検証を行い、開示してまいります。今後とも皆さまからのご支援・ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。