トップメッセージ
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真面目さ、真剣さの気風強みに100年企業へ
当社は第二次世界大戦終戦間もない1947年に、当時高松で勤務していた松田正二が、勤務先の従業員の生活を守ることと、復興に向けて社会に役立つことを目的に、戦後復興に欠かせない住宅事業で創業しました。その後、1956年には海外から原料を輸入しポリエチレンフィルムの製造を始めるなど、絶えず社会に必要とされる新たな事業に挑戦してきました。それはものづくりだけでなく、ホテル業をはじめとするサービス業や冷凍倉庫業にも及びました。
従業員はほとんどが香川県、そして四国の出身者でしたが、1960年代以降の全国展開に合わせて全国に転勤して活動し、現在では、様々な業界に、数千に及ぶお客様を開拓して取引きをしております。一方、ものづくりにおいては、お客様ごとにオーダーメイドの製品を中心にものづくりをし、海外で普及済みの製品を国内で普及するために、製品開発を行い技術力を高めてきました。そして、1990年代にはデジタル化の将来性にいち早く着目し、電子材料、光学材料の開発を進め、現在では事業の大きな柱の一つに成長しました。
今日まで会社が発展・継続できた要因は、様々な産業・分野のお客様との取引きを通じネットワークを構築することができたこと、オーダーメイドのものづくりに応え培われた技術力をもとに社会に役立つ製品開発にチャレンジをしてきたからです。また、これらを成し遂げてこられたのは、草創期から今日に至るまで、真面目に、真剣に仕事に取り組む従業員がいたおかげであり、これが一番の強みと考えています。
当社は装置産業というより加工メーカーですので、材料設計とともに従業員のオペレーション技術によるところが多いものづくりです。今後IoT、AIによる自動化が進む中にあっても、新たな開発やものづくりの知恵やアイデア、発想は人から生まれます。何事にも真面目に、真剣に取り組む従業員・組織の気風を強みに事業を通じて社会課題の解決に貢献し、100年企業を目指していきたいと考えています。 -
外部環境の変化を踏まえ「Next10(2030)」へ改定
前中期経営計画は、次の10年に向けた「経営ビジョンNext10」として「要素技術を通じて新たな価値を創造し、お客様から選ばれるソリューションパートナー」の方針を設定し、その第1ステージとしてグループの土台作りを目指してきました。その結果、最終年度の2021年は、営業利益目標48億円に対し51億円を達成するなど、一定の成果を出すことができました。
ただ、2020年初頭から広がった新型コロナウイルス感染症の影響は、ビジネススタイルや人々の生活スタイルを激変させました。更に、世界的な脱炭素社会への動きが、加速度的に進行するなど、外部環境も激変しました。これらの変化を踏まえ、それまでの中長期ビジョン「Next10」を、注力する事業領域をより明確にしたポートフォリオと数値目標を設定した「Next10(2030)」として改定し、期間を2030年までとしました。
基本方針として「事業ポートフォリオの深化」を掲げており、社会課題の解決、お客様の価値向上を目指して当社のビジネスモデルの変革を目指すこととしています。また、「人ひとりを大切に」「地域社会への貢献」「お客様を第一に」という当社グループの経営理念のもと、「『社会から信頼される企業』であり続けるために、事業を通じて、社会との共生を念頭に企業の成長を目指す」をサステナビリティ基本方針とし、環境・社会・ガバナンスを重視したESG経営に事業活動を通して取り組むことで持続的な成長と企業価値の向上を実現することも明記しました。 -
4つの事業分野で成長路線を明確化
最大の特徴は、成長路線を明確に打ち出したことです。ポートフォリオの深化に向け「情報電子」「プロセス機能材料」「環境・エネルギー」「ライフサイエンス」を注力する領域の成長分野と位置づけました。2030年までの総投資額650億円のうち65%をこれら分野の成長(拡充)・戦略(新規)投資に振り分け、それぞれの分野において当社の材料設計と加工技術を高め、お客様価値の向上を目指します。
その中でも特に「情報電子」「プロセス機能材料」においては、電波を途切れさせないための5Gミリ波対応材料や、デジタルサイネージやEVのディスプレイに使われるディスプレイ材料、半導体部品や自動車部品の製造に欠かせないフィルムやEV部品向けのアクリル系接着剤、スマホなどの電池に使われるフィルムなどの工業プロセス材料への重点投資を行い成長を目指します。
また、「環境・エネルギー」では、資源循環を目的とし、市場から回収した廃棄プラスチックを原料に戻し、それを利用してリサイクルフィルムを造るなどリサイクル化製品への開発投資を進めます。「ライフサイエンス」については、細胞培養装置で使われるバッグなどの医療向け製品のほか、栽培した農作物から抽出した原料を健康食品にする研究も進めていきます。 -
生活サポート群は環境貢献製品への転換に注力
もう一つの特徴は、建材事業と合成樹脂事業については生活に密着した住や食に関わる製品群が多いのですが、これらを含む、生活サポート群を環境貢献製品へ転換を図っていくとともに新製品の開発を強化していきます。そのために今般、環境貢献製品を定義し、名称を「Caerula(カエルラ)」と名付けました。現在、生活サポート群における「Caerula(カエルラ)」の比率は3割ほどですが、2024年には半数、そして2030年には全ての製品を環境貢献製品に切り替えることを目指します。また、当社の建材事業は資源循環製品としてパーティクルボードを生産していますが、2030年に向けて、森林資源の保護と有効活用を目的にした木質材料の開発にも取り組んでいきます。
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土台作りと基盤強化に向け組織体制を変更
「Next10(2030)」の第1ステージである前中期経営計画に引き続き、「中期経営計画(2024)」は「土台作り&基盤強化」の第2ステージと位置づけています。前中期経営計画中に発生した新型コロナウイルスによるパンデミックの影響によって営業活動や開発活動が大きく制限を受けました。これをふまえ、「Next10(2030)」に向け、事業の更なる質の向上を目指すべく、既存事業の基盤強化として組織体制を変更しました。
まず、既存事業においては、2022年1月にグループ会社で、合成樹脂製品を製造する関西オークラと関東オークラを統合し、KSオークラとしました。今後は、両社の持っていた技術を融合し環境貢献製品を新たに創出することによって収益力の向上を目指すとともに、市場の大きい関東地区において営業人員の増強を図り、プレゼンスを高めます。建材事業では、プレカット事業、ハウス事業をセグメントに加えました。両事業の強みを生かして相乗効果を図り、建築現場の人手不足に対応した省施工パネル、また非住宅製品の開発、販売により、付加価値の増大を目指します。
また、成長投資に向けた組織の変更として、R&Dセンターの中にマーケティング機能を持った専門部隊を新たに設けました。これまではそれぞれが担当する開発案件の中でしかマーケティングを考えることができていませんでしたが、専任者を設け、技術動向を俯瞰しながら次の事業の芽を見つけ、新たな開発テーマに加えていきたいと考えています。 -
総投資額は前中期経営計画の倍近い250億円を計画
総投資額は、前中期経営計画期間の総投資額134億円の倍に近い250億円を計画しています。うち成長・戦略投資が6割以上を占めます。特に「情報電子」「プロセス機能材料」は戦略・成長投資により更なる成長を目指します。具体的には、大型液晶テレビ向け偏光子保護用アクリルフィルムの工場に約60億円を投資することにより生産能力を倍増させ、2023年末の量産開始を予定しています。また、プロセス機能材料の一部については、海外のお客様が中心であることから需要地に近い海外での拠点設置を計画中です。
こうした成長・戦略投資に比重を置いた経営ができるようになったのは、リーマンショックが起きた2008年以降着実に負債を返済し、実質無借金経営にこぎつけることができたことが大きな要因となっています。戦略投資の中にはM&Aの枠も設けており、他社と協業しながらスピード感を持って新分野の開拓も行っていきます。 -
事業を通じて社会課題を解決し持続的成長へ
当社グループは、サステナビリティ基本方針として「『社会から信頼される企業』であり続けるために、事業を通じて、社会との共生を念頭に企業の成長を目指す」を掲げています。この方針に基づき、社会課題に対して事業を通じてソリューションを提供し、持続可能な社会づくりへ貢献するとともに、企業としての持続的な成長を目指しています。ESGの取組みについては、当社で特定した「マテリアリティ」ならびに「事業継続のための基盤」をもとに活動を推進しています。
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気候変動対策に対する取組みを推進
まず、E(環境)については、気候変動への対応を喫緊の課題と捉え、2030年にCO2排出量を2013年度比50%削減することを目標に取り組んでいきます。具体的には、「現場での徹底した省エネ活動」が活動のベースとなります。また、LED化をはじめとする「省エネ設備への更新」に全事業所で取り組みます。また、「自家消費型の太陽光発電システムの設置」「電力市場からのCO2フリー電力の導入」「バイオマス利用の拡大」を進めていきます。
その中でも特筆すべき投資として、現在、本社地区の新規材料事業部D棟の屋上に自家消費型太陽光発電システムの導入を進めており、2023年1月には運用を開始する予定です。併せて、同様の太陽光発電システムを今後他の工場にも広げていくことを計画しています。
また、先に申し上げた通り、CO2排出削減や環境負荷軽減への貢献、いわゆるサステナブル社会に貢献できる製品として、新たに「Caerula(カエルラ)」のネーミングとロゴマークの付与制度を設けました。2030年には、生活サポート群の製品全般を環境貢献製品へ転換し、企業と社会の相乗発展に貢献する事業活動を進めていきます。更に、当社の中核事業であるプラスチック製品に対して、資源循環を推進すべく、年間3万トン以上の再生利用を目指していきます。 -
TCFD提言への賛同を表明、情報開示も積極的に
2022年2月にTCFD提言への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなるTCFDコンソーシアムに参画しました。合成樹脂事業、新規材料事業、建材事業ごとに、TCFD提言に基づいて気候変動がもたらす事業へのリスクと機会をシナリオ分析し、主要なリスク及び機会に対する財務インパクトの算定、対応策の検討を行いました。その結果を4月にステークホルダーに向けて開示しています。今後、「脱炭素社会」に向けた取組みを推進するとともに、その対応に関する情報開示を拡充していきます。
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社会から信頼され続ける企業を目指して
S(社会)に対する取組みとしては、ダイバーシティの実現に向けて、全従業員が活躍しチャレンジ可能な、そして、成長を促す新たな「人事評価制度」「教育プログラム」を策定しました。人権尊重とともに、女性、高齢者、障がい者の方々等全ての従業員が活躍できる会社を目指します。また、社会との共生を念頭に、地域社会の活性化への活動に積極的に参画していきます。
また、香川県に本社を置く企業として地域活性化への貢献は欠かせないと考えています。製造拠点を置く拠点も含めたそれぞれの拠点は高齢化、人口減少が特に進んでいる地域が多いことから、それぞれの自治体と一緒に地域活性化のために何ができるのかを考えながら、様々な活動に参画していきたいと考えています。
最後にG(ガバナンス)の取組みについてです。当社は東証プライム市場への移行を選択した企業として、市場が求めるルールや会社法が求める内部統制体制を満たしながら、取締役会運営やコンプライアンス体制の充実を図っていきます。そのための具体策として、指名報酬委員会を設置しました。今後は経営体制の透明性、実効性をより高め、持続的な成長を目指して迅速な意思決定を行うとともに、各ステークホルダーとの対話を通じて、社会から信頼を受ける企業であり続けるために経営品質の向上に取り組みます。 -
これからもステークホルダーの皆さまとともに
当社グループは2022年に創立75周年を迎えました。その長い歴史を振り返ると、社会の変化に伴う幾多の困難を乗り越え、多くのステークホルダーの皆さまのご支援をいただきながら、社会に役立つ、人々の役に立つものづくりを通して、貢献してきた歴史であったといえます。
2020年からの新型コロナウイルスの拡大に伴うパンデミックが引き起こした世界経済の減速から回復を期待していたところに、2022年に入ってロシアのウクライナ侵攻により様々な資源・エネルギーが高騰し、コストの上昇に直面しています。我々はこの難局を乗り越え、次の成長を目指した取組み、投資を行うことで投資収益を上げ、株主様への還元を図ってまいります。なお、株主配当については安定的な配当を継続することを基本に、中長期的には配当性向30%以上を目指してまいります。
私は、ステークホルダーの皆さまの声に耳を傾け、共に歩み、成果を分かち合い、そして喜びを感じていただける、そういう会社にしていきたいと考えています。不透明感の強い外部環境のもとではありますが、財務体質が改善されたことにより、成長・戦略投資に重点配分をし、成長戦略にかじを切ることのできるタイミングがようやく到来したと考えています。当社グループはこれからもお客様や社会の期待に応え、確実に成果を上げることで、社会から信頼され続ける企業を目指して経営品質の向上に努めてまいります。
今後とも皆さまからのご指導・ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。